論文の書き方(応用編)


今日は英語論文のパターン等、課題論文の書き方の応用編についてお話しします。基礎編に続く内容なので、できれば先にそちらをお読みください。以下、「論文」は課題論文のことを指します。課題論文(essayと言われることが多いです。)とは、単語数1,500〜6,000語の、授業に付随した課題として出される論文です。


英語で書かれた論文のパターンを知ることは、論文を書く作業のみならず、読む作業でも大変役に立ちます。どこに重点があるか、さらに言うなら、どこを読めばいいか、が分かるので、論文を読むスピードが上がり、効率よく勉強できるようになります。


英語の論文には決まったパターンがあります。パターンに従った論文を書くことは、決してズルいことではなく、第一の条件として求められるものです。むしろそうしないと、評価が低くなってしまいます。仮にどんなに内容が良くても、です。一定の表現様式(デリバリー(delivery)と言ったりします)に沿っていないと良いものではない、というような考え方があるように思います。


大まかな枠組みは、イントロダクション(introduction)、本体(body)、結論(conclusion)に分けられます。



イントロダクション(introduction)


イントロダクションは、論文の主題となるメイントピック(main topic)、学問的な論争(academic argument)、論文の組み立て(structure)を含み、場合によっては重要な単語の定義(definition)や論文の範囲・限界(limitation)も入ります。


メイントピックとは、この論文で一番言いたいことです。基礎編の例を用いるなら、「貧困は定義づけが難しいことから、その尺度を決めるのには困難がつきまとう。」でしょうか。この論文で主張しようと思っていることを、一番最初の一文でズバリ言い切ります。


学問的な論争とは、この論文が扱う話題について、どのような議論があるか、です。ある立場の学者はこういい、また別の立場の学者はこう言っている、というような感じで、基礎編の例を用いるなら、「絶対的貧困という概念を用いる立場もあり、一方相対的貧困という概念を用いる立場もある。」でしょうか。


論文の組み立てとは、続くパラグラフでどのようなことを扱うか、を簡単に説明します。基礎編の例を用いるなら、「まず始めに絶対的貧困について概観し、つづいて相対的貧困について考察する。そしてその優劣について比較検討を行う。」でしょうか。


定義と言うと堅苦しいかもしれませんが、この論文であなたが新しい熟語を用いる場合等、あまり普及していない概念を用いる場合には、予め説明してしまいましょう。「この論文において○○とは、…。」という具合です。また、対象をある範囲に区切る場合は、それも予め説明してしまいます。「この論文では、長さの都合から、イギリスにおける貧困の尺度についてのみ検討する。」というような具合です。


本体(body)


本体のパラグラフの数は、論文の展開におけるトピックの数によって決まります。仮に論文の流れが、見解Aの考察、見解Bの考察、見解Cの考察、それらの比較検討、だとすると、本体はこの4つのパラグラフから構成されることになります。


それぞれのパラグラフの構成は、そのパラグラフが扱うトピックについての一番重要な文(main sentence)1つ、それを説明した文(support sentence)1〜2つ、具体例(example)1〜2個、そして一番言いたい文を言い換えた文(concluding sentence)1つ、というようになります。


トピックとは、一つの論点のことです。三段論法の「段」のようなものです。
基礎編の例を用いるなら、「絶対的貧困とは」、「相対的貧困とは」、「その比較検討」の一つ一つがトピックを構成します。


説明した文とは、別の単語や概念を用いて、より分かりやすいように言い換えた文章のことです。その際には多少内容が変わってもかまいません。パラフレーズ(paraphrase)する、と言われたりもします。拙いですが例を。


The notion of absolute poverty is aimed at a universal use; however, it can not escape from a certain effect of culture or custom in the society. Although the notion stands on the biological need for existence, many scholars proved that such need is deeply affected by a cultural or religious preference. For example, …
絶対的貧困という概念は、普遍的に用いられることが意図されているが、そのような概念も社会の文化や風習の影響からは逃れられない。」「その概念は生存のための生物的なニーズに立脚しているが、そのようなニーズも文化的・宗教的な選好の影響が大きいことを、たくさんの学者が示している。例えば、…」


後ろの文が、微妙に単語や意味を変えつつ、前の文を言い換えていることを読み取っていただけたら幸いです。論文では、一つ文を書いたら、必ずその文の説明(言い換え)や理由付け、具体例によるサポートが必要だと考えてください。


結論(conclusion)


結論は、この論文のおさらいです。論文の中で出てきた重要な文を言い換えてつなげます。すなわち、メイントピックを少し言い換えたものの後に、各パラグラフの一番重要な文を少し言い換えたものが続きます。気をつけなければいけないのは、今まで出てきた内容以外の新しいことを含めてはいけないことです。そして最後には、メイントピックをまた言い換えたものを加えてもいいですし、今後どのような研究が必要か(将来への展望)というようなことを書いてもいいでしょう。



最後に、それぞれのパーツの分量の目安ですが、イントロダクション:10〜15%、本体の各パラグラフ:一つ15〜20%、結論:10〜15%、という感じだと良いと思います。1,500語の論文なら、イントロダクション150〜200語、本体のパラグラフは1つ250〜300語で、それが3〜5つ、結論は150語、といったところでしょうか。一つ一つのパラグラフの単語数が揃っているとなお良いようですが、あまり厳密にやらなくてもいいようです。


学校によっては、論文の書き方講座のようなものを無料で開いていたりします。可能ならぜひ出席してみてください。そういうものを聞き、また、勉強のしかたについて大学生向けに書かれた書籍(ハウツー本のようなもの)を読んだりして、実際に自分で論文を1〜2個書けば、このようなパターンに沿った論文は自然に書けるようになります。最初は慣れなくていろいろ苦労すると思います。ですがそれは留学生のほぼ全員が通る道ですし、無事卒業できた学生の数が物語っているように、勉強していればきちんと身につくものなので、ご安心ください。自分を信じてコツコツ頑張っていきましょう。