寮生活での経験


自分が大学の寮に住んで共同生活をしたのはたった3週間で、しかもそれは学期期間中ではありませんでしたが、その短い期間に実にいろいろなことを学べたと思っています。自分にとっては、寮に住むという選択肢を消してもらえたわけで、ある意味大変ありがたい経験だったと思っています。自分の経験は特異なものかもしれませんで、最終的な判断を下すのは皆さん自身ですが、今日は経験者の声をぜひお聞きください。


自分が寮に住んだのはロンドンにいた時期の、9月1週目途中から4週目途中まででした。その期間は、ちょうど大学の授業開始前・大学院の修士論文期限の直後という、一年で一番リラックスした時期でした。自分が住んだのは個室にはシャワーとバスがセットになった部屋が付いていて、キッチンのみを共有する形式の寮でした。冷蔵庫は個人の部屋にもあるものの、かなり小さいため、みなキッチンの大き目のものに棚を分けて入れられていました。それから、寮の費用は年間分を2回に分けて前納し、基本的に返金されないシステムでした。そんな寮での生活で何が起きたかを列挙していきます。


1. 買ってきたものが食われる
一番初めに被害に遭ったのは牛乳でした。2パイント(pint。これで1リットル強)入りのものを買ってきて少し飲み、キッチンの冷蔵庫に入れておいたら、翌日の午後同じくらいの時間に見ると半分以下になっていました。他にも、同じタイミングで入れた小さいヨーグルトやチーズなどが軒並み食われていましたが、一番腹が立ったのは、クロワッサンのカスタードサンド(この国ではなぜかアーモンド・クロワッサンと呼ばれます)4個入りが、自分は1個しか食べていないのに翌日に1個しか残っていなかった、すなわち2個食われたことです。


こういったことはよくあるようで、日本人学生の友人たちからも、被害に遭ったという話をしばしば聞きました。盗み食いは、自分がやったという証拠が残らず、現場を押さえないと犯行を証明しにくい、というたちの悪い行為です。人のものを了承もなく食べるなんて最悪です。見つからなければ何をやってもいい、とでも思っているのでしょうか。俺が見つけたら何でも俺のもの、なのでしょうか。その冷蔵庫は自分の家の冷蔵庫だと思っているのでしょうか。この国の大学生・大学院生の品行なんてそんなものか、と怒り、心底呆れました。


余談ですが、友人の旦那さんがあみ出した必殺の牛乳防御ワザは、緑に着色しておくことだそうです。確かに飲む気がしなさそうですが、そこまでしないと自分の食べ物を守れないなんて、本当に悲しいことです。また、盗み食いにも傾向があるようで、オーガニック(organic。低農薬農法等で生産された、いわゆる”体にいい”食べ物)の食材が一番に食われます。牛乳もオーガニックのものから先になくなります。未開封のものは食べられたことがありません。さすがに気が引けるのでしょうか。何を書いても効果がなく、名前や、Don’t eat等の警告、さらにはドクロマークを書いても無駄でした。


2. 皿やフライパンを洗わない
基本的に流しは洗い物で溢れています。なぜなら彼らは自分が使っても洗わないからです。次に使いたい人が洗って使え、というルールのようです。おかげでどれも汚れがこびりついています。自分が使って洗って片付けておいても、次の日に見ると使われて流しに放置されていました。毎回とまではいかなかったものの、2日すれば必ず放置されている洗い物を見かける始末でした。洗う自分が損するだけでばかばかしい、と思いつつも、でも自分で使ったものを放置するなんてできないので、やむなく見かけるたびに洗って片付けていましたが、一向に状況が改善しないので3週間で疲れてしまいました。同じキッチンを使っていると思われる人を見つけたときには「使ったら洗うようにしよう」とたびたび言っていたものの、「ああそうだね」とあたかも他人事のような返事ばかりでした。


3. 自分のゴミを捨てない・拭かない
自分が出したゴミはそのまま放置するようで、翌朝見ると前の日に何を食べたかが(パスタやらピザやらステーキやら)がそのまま分かるほどです。ゴミ箱に捨てるなんて簡単なのですが、それすらもあまりしない人がいるようです。また、キッチン周りやテーブルなどに汁をこぼしても拭かないようで、汚れが乾いてこびりついていることがしばしばありました。人に見つからなければ何をしてもいい(何もしなくていい)、というのがルールのようです。


4. 外の音が筒抜け
自分が当たった部屋は通りに面していました。その通りは片側一車線の道路でしたが、車通りが多く、それが一晩中聞こえました。そもそもロンドンは眠らない街で、夜中でもたくさん車が通ります。石造りの建物が多いからか、車の音が反響するようで、よく響きます。それから、窓や壁には防音と言うコンセプトは無いようで(参照:家の造り)、よほどいい家でない限り外の音は筒抜けです。そのダブルパンチで、部屋では車の通り抜ける音が一晩中聞こえました。あまり眠れない日々が3週間ずっと続き、疲労困憊でした。部屋を変えてくれ、と何度も要求し、寮長にまで交渉したものの、「すぐ慣れる」「気にしすぎた」「公正な抽選だからしょうがない」「自分には変える権限がない」「ぐっすり眠るための4か条を教えてやる」などという適当な返事ばかりで、全く取り合ってもらえませんでした。


5. 部屋のシャワーがヌルヌルする
前に住んでいた人々がよく掃除しなかったためか、シャワー室の床や壁のヌルヌルが取れず、また臭いも何度掃除してもくさいままでした。月に1度は清掃スタッフがしっかり掃除することになっていましたが、それの効果があってもその程度だったのか、とてもきれいとは言えない状況でした。


このような経験から、自分はおよそ寮では生活できないな、と知りました。ここで暮らすとなると、選択肢は、我慢する、周囲に働きかける、自分も開き直る、の3通りしか思いつきませんで、どれも莫大なエネルギーを必要とし、ストレスもかなり高くなりそうだ、と考えたからです。日常生活でのささいなストレスは、じわじわ溜まって確実に影響を及ぼしてくるものですし、また周囲を変えるなんておよそ無理、さらには、開き直ると日本に帰って社会生活が送れなさそうです。勉強を優先するのであれば余計なストレスは極力抑えなければなりません。寮生活で得られそうなものはいくつもありますが(英会話の上達、異文化交流等)、リスクの方を重く考え、自分は寮生活を断念しました。


自分の経験がすべてに当てはまるとは言いません。寮に住んでいた友人はたくさんおり、特に不満はなかったという人、いいメンバーに恵まれてとても楽しかったという人ももちろんいます。ですがそれは、ちょうど箱を開けてみないと中身が分からないのと同じように、一緒に生活するまで分からないものです。自分はそこで失敗するリスクを避けたかったというわけです。その判断には、寮費は中途返金されない、という仕組みも影響を与えていたとは思いますが、1〜4の経験が決め手になりました。自分の判断は間違っていなかったと思っていますが、欲を言うなら、自分もいいメンバーに囲まれて寮生活を送ってみたかったです。寮に住むにあたってはお試し期間が欲しいところです。



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