イギリスの期末試験対策


イギリスの大学ではそろそろ試験のシーズンでしょうか。今日は試験対策のしかたについてお話しします。試験(exam)にはいろいろバリエーションがあるかもしれませんが、ここで想定しているのは、イギリスの大学や大学院で実施されている、1つ600〜800語の解答を2時間で2問(又は3時間で3問)書くものです。


まず何より大事なのは、試験についての情報を集めることです。大学では無料で試験対策講座が開かれると思いますので、ぜひそれに出席してください。また、大学のウェブサイトには、過去の講座の資料等が掲載されているかもしれませんので、それも念のためチェックをしてみてください。


最初に試験のスタイルについてですが、いろいろパターンがありそうなのできちんとチェックしましょう。自分が受けたのは、設問10個のうちから2つについて2時間以内で書く、というものでした。


試験のスタイルを確認したうえで準備を進めていきますが、対策のポイントは、頻出のトピックを調べ、その中で自分がよく勉強したものについて、パターンに沿った解答を予め作成し、暗記して、予行演習しておくことです。


まずは頻出のトピックについてですが、日本で行われている試験(大学での期末試験、大学入試や資格試験等)と同様に、出題されるトピックはそれほど多くはありません。設問は毎年全て違うように見えても、問われている中身にはあまりバリエーションはないものです。これは、過去問(past exam)を調べればすぐ分かります。過去問は、大学の図書館にあったり、ウェブサイトに掲げられていたりしますので、早い段階で5〜6年分は必ずチェックしてください。自分が勉強した例だと、社会政策の試験では、貧困(poverty)、社会保障(social security)、グローバリゼーション(globalisation)などが頻出していて、中身は、貧困の測り方、給付の方法、人の移動の拡大による社会政策の考え方の変化、等にほぼ限定されており、対象とする国や時期等を変えて繰り返し出題されていました。


このような頻出トピックの中からターゲットを絞りますが、自分がよく勉強して知っているものをいくつかピックアップします。文献をたくさん読んだりゼミで発表したりしたものでもいいですし、また自分でよく分かっていると思えるものを選んでもいいです。ターゲットの数ですが、2時間の試験で10問から2つ選ぶのであれば4〜5個、3時間の試験で15問から3つ選ぶのであれば7〜8個でしょうか。手を広げすぎても時間が足りなくなりますし、少ないと外したときのリスクが大きいので、難しいところです。


続いて答案のパターンについてですが、学校によって特徴的なパターンがあるかもしれませんが、一般的には、課題論文から文献の詳細を除いたもの、というようなイメージでいいと思います(参照:論文の書き方(応用編))。構成は、イントロダクション・本体・結論となり、パラグラフ数は、イントロダクションと結論が1つずつ、本体は3つか4つ、というようになります。


イントロダクションは6文程度で、設問の答えとなる一文(answering sentence)を冒頭に置き、続く1文でそれを言い換えつつ説明します。設問に関係する学術的な議論(academic argument)3つを3文程度書き、最後に解答の構成について1文で書きます。構成とは、「まず○○、△△、□□の議論それぞれについて概観した上で、その長所・短所について比較検討を行う。」というような感じです。


本体ですが、学術的な議論には1つごとに1パラグラフを使います。冒頭にその議論の主な内容(main topic)を書き、それを言い換えつつ説明した1文を書きます。続けて、具体例と有力な学説を1つずつ、固有名詞を散りばめつつ4文程度で書きます。最後にそのパラグラフをまとめる(=main topicを言い換えたもの)を書きます。有力な学説については、ぜひその主たる提唱者の名前を入れてください。一般に文献の引用の際にはその論文の正しいタイトルや発表年も必要ですが、試験ではそれらがなくても許されます。具体例についても、ソースを示す情報はそれほど必要ありません。大事なのは根拠を明示することよりも、具体例や有力な学説を知っていることを示すことにあります。設問の内容によっては、学術的な議論について比較検討(discussion)するパラグラフを置きますが、これは結論に含めてしまっていいかもしれません。


結論は、本体の内容をおさらいするものになります。今まで出てきたパラグラフのmain topicを言い換えて並べるだけでも十分です。そして一番最後の文章でanswering sentenceの内容を重ねて強調して終了します。


以上のような構成で、一つの解答を600〜800語で書きます。
イントロダクションと結論が100語で、本体のパラグラフ1つに100〜150語、といったところでしょうか。


このようなパターンに沿った解答を、予め用意します。これは、試験時間中の作業を少しでも楽にするためです。解答を予め作成する(しなければならない、とまで言えるかもしれません)一番の理由は、解答時間が短いことです。2時間又は3時間というのは長いように思えますが、いざ試験本番で解答を書いてみると、たいていの人は全く時間が足りないことに気づくと思います。何か出来合いの文章でいいので、手書きで全て写す、というのをぜひやって、自分が1時間でどれくらい書けるかを計ってみてほしいのですが、1時間で多くても1,000語くらいしかいかないと思います。頭で考えずにひたすら書いてもその程度ですので、構成や内容を考えながら書いた場合にどうなるかは明白です。試験当日は、暗記したものだけではきちんとした回答にならず、設問に沿って手を加えて書くことになりますが、できるだけ考えずに書き続ける作業だけにして、手を加えられる時間をより長く確保する必要があります。


解答を予め用意しておくもう一つの理由は、教官や他の生徒にチェックしてもらえるかもしれないからです。試験直前でない限りは、教官に解答案(又はその概要)を持っていくと、内容をチェックし、不足を補ってくれたりします。また、他の生徒と交換して互いにチェックすることも、とても有効です。
解答を早めに作成しておけば、そのように質を高めることが可能になります。


最後に大事なのは予行演習です。過去問を使って、実際の試験の設問数・時間に合わせてやってみましょう。暗記したものを書き出すだけでもいいです。これをやっておくと、自分の筆記スピードが分かりますし、腕力もつきます。ただ、やる時期には注意が必要で、試験1週間前より後になったらやらない方がいいと思います。体力をかなり消耗しますし、また思っているよりも書けないことから、精神的にもかなり負担になりますので、自分の疲れ具合ややる気とよく相談してください。


試験に向けては体調管理にも気をつけてください。試験場は暑かったり寒かったりするので、着ていくものにも注意しましょう。幸運をお祈りしております。