イギリス人の車の運転

MatchofTheDay2007-05-27



何かの本に「イギリスは運転マナーも紳士の国」のようなことが書いてあるようですが、それは見る人の気持ち次第だと思います。自分にはあまりそう思えません。今日はイギリスでの運転の実情についてお話しします。


この国の人々の運転を見た感想を簡単に申し上げると、ルールは守られていますが、決して穏やかな運転ではない、という感じになります。以下順を追ってご説明します。


ルールは守られている、というのは、交通法規や慣習は一応守られている、というくらいの意味です。日本にはないラウンドアバウト(round-about)でのルール、右から車が来ている状態ではラウンドアバウトに進入せず、ラウンドアバウト内では追い越しをしない、は遵守されていますし、信号はそれなりに守られています。十字路等で他の車に出くわしたときは先着順で(優先道路うんぬんはあまり守られていない)順番に車が通っていきますし、道を譲ってもらったようなときにはそ、手を軽く挙げたりサムアップ(親指を上に上げる)したりして軽く礼をしていきます。


ここまでなら“紳士的な”運転態度となるかもしれませんが、ここから先がいけません。この国のドライバーにとっては、道路は自分の高い運転技術を示す場、すなわちサーキットのようなものなのです。まず基本的に爆走します。爆走しようと常に試みます。一般に高速道路の制限速度は時速70マイル(時速112キロ)、その他の一般道では時速60マイル(時速96キロ)、市街地では時速40マイルか30マイル(時速64キロか48キロ)ですが、スピードカメラでもない限りほとんど守られていません。特に高速道路や郊外の道路ではものすごい速さで爆走します。推定時速130マイル(時速200キロ以上)なんていうのもざらです。ドライバーの多くは、先行車がない限り制限速度は守らなくてもいい、と思っているようで、日本でよく見るような、他の車がなくても制限速度できちんと走っているような車は、ほとんど見たことがありません。


そのように常にスピードを出したがるので、前の車を常に追い越そうとしてきます。制限速度で走っていても、後ろにぴったりくっついてあおってきます。郊外で時速70マイルで走っているような場合にも、です。やむなく道を譲ると、さもうれしそうに大加速していき、前の車にまたぴったりくっついてあおる、というのを繰り返します。追い越しの際も、追い越し後しばらく走って車間を確保してから元の車線に戻るのではなく、追い越したらすぐ元の車線に戻るので、自分の車の鼻先がこすれるのでは、と見ていて冷や冷やします。


その他にも「運転は常にレース」を示す事象はたくさんあります。片側2車線の道で、信号で2台並んで止まっていると、信号が変わった瞬間に加速勝負になりますし、片側1車線で追い越しができない状態でも、前の車にぴったりくっついて走り、車間が2メートルもない、なんてこともざらです。寸暇を惜しんで加速したがるので、先の信号が赤ですぐ止まることが分かっていても、最大限スピードを出し、急ブレーキで停止線ぴったりに止まろうとします。


このような有様なので、自分にとってこの国での運転は負担が大きいです。総合的にみるとあまり楽しくありません。景色のいい道はたくさんあって、そういった道を走るのは気分がいいのですが、他のドライバーの行動には常に多大な注意を払っていなければならず、すぐ疲れてしまいます。道幅は広く、車線も多いですし、高速道路は無料、ということで、施設面ではいいと思いますが、ドライバー達が良くない、という感じで、この国の運転環境に関する自分の総合評価はマイナスです。


日本にいたときは2週間に一度くらいの頻度で車を運転していました。都内や郊外、行楽地などいろいろなところを走っていましたが、あまり上手な方だとは思っていないものの、幸い無事故で、スピード違反等も取られたことはありません。イギリスに来て、リーズに引っ越してからよく車に乗るようになりましたが、このような有様でちょっと辟易しています。せっかく車を買ったのだからドライブにいそしめばいいものの、あまり楽しくないのでそれほど走れていません。残念です。


なお、ドライバー達の「道路はサーキット」というような意識傾向は、この国の車情報番組にも表れています。「Top Gear」(BBC)や「Fifth Gear」(Five)といった番組があり、特に後者では毎週必ず新車の試乗のコーナーがあるのですが、そのテストは必ずサーキット等での爆走なのです。時速180マイル(時速288キロ)とか出してタイヤをきしませながらサーキットを走りぬけ、その感想を言います。テストされる車には、スポーツカーだけでなく、普通のセダンなども含まれています。この番組は一部の車好きのためだけのものなのかもしれませんが、それでも、車の価値は爆走のときの感触で決まる、とでも言わんばかりの構成です。インテリアや居住性、燃費、安全性といった評価ポイントはないのではないでしょうか。


丘と牧草地が地平線まで広がり、教会の尖塔や石造りの家が点在していて、牛や羊が草を食んでいる、というような、イギリスの美しい景色を楽しもうとしたら、おそらく車で走るのが一番だと思います。車が左側通行で日本と似ており、走りやすいですし。ただ、そのような景色をのんびり楽しむ際にも、周りの車は危ないので、くれぐれもご注意ください。



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