タリス・スコラーズ!

MatchofTheDay2007-05-26



自分がイギリスを目指した理由はたくさんありますが、その一つにタリス・スコラーズTallis Scholars)という合唱団の存在があります。


中世・ルネサンス期(14-16世紀)の西欧の音楽は、無伴奏の声楽がメインでした。バッハが活躍するよりもずっと前で、まだオーケストラもなく、バイオリンもなかった時代です(リュートやリコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバといった楽器はありました)。なので、その時代、音楽といえば合唱曲、主に無伴奏混声合唱曲だったわけです。西洋の音楽というとすぐに管弦楽を想像しますが、そういったものが存在しない時代は、音楽といえば声(独唱・合唱)だったのです。


中世・ルネサンス期の曲の構成は、ポリフォニーを特徴としています。ポリフォニーとは複数の異なる動きの声部(パート)が、協和しあって進行するものです(ウィキペディア参照)。同時に似たような展開の旋律を歌う現代の合唱曲とは違い、各パートがそれぞれ独自の旋律を歌い、それが綾のように織り成されて音楽となります。ごく簡単に言うと、同じ旋律を別のタイミングで歌うことも含まれるので、「かえるの歌」の輪唱に似ているかもしれません(そんな例えをすると愛好者にしかられそうですが)。一時期日本でもグレゴリアン・チャントがはやりましたが、単独のパートの旋律はそれに似ています。イメージとしては、その各パートの旋律が複雑に絡まると、ポリフォニーの曲になる、という感じです。


前置きが長くなりましたが、タリス・スコラーズは、そのような中世・ルネサンス期の無伴奏混声合唱曲を扱う合唱団の中で随一の人気を誇る、超ビッグネームです。大学時代にその時代の曲を歌う合唱サークルにいた関係で、その存在を知りました。当時はその時代のCDを片っ端から聞いていましたが、その中でもタリス・スコラーズは声の美しさやハーモニーのバランスなど、他の追随を許さない素晴らしさで、いまだに自分にとっては神様のような存在です。


この2年近くの間に2度、ブライトン(Brighton)とヨーク(York)の教会で行われたコンサートに行きましたが、どちらも素晴らしかったです。
ビブラートなど使わない素直な発声法なのですが、それが教会の音響にマッチしてよく響き渡っていました。圧巻はブライトンで聞いたアレグリ(Allegri)のミゼレーレ(Miserere)でした。最初の入りの音から衝撃を受けました。小さい発声ながらピッチ、バランスともに完璧で、CD並みの上手さです。自分は今ものすごい歌を聞いている。。。曲が終わってもしばらく涙がとまらないくらい感動しました。イギリスに来て本当によかった、としみじみ思いながら帰宅しました。


皆様も機会があればぜひ一度お聞きください。無理のない優しい発声と独特な旋律、パーフェクトなピッチとバランスで、きっと素晴らしいひと時を過ごすことができると思います。タリス・スコラーズのCDはギメル(Gimell)というレーベルからたくさん出ています。上記ミゼレーレの他には、ミサ・パンジェ・リングヮ(Missa Pange Lingua)がお勧めです。なお、来週(6月2日〜7日)日本公演があるようです(下記サイト参照)。
ttp://www.thetallisscholars.co.uk/



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